神の魚ブリを日本海から運んだ古道 旧飛騨街道

旧飛騨街道は日本海の富山湾から飛騨を経由して信州に至り、「ブリ街道」とも呼ばれました。神に捧げる神聖な魚ブリは「神の魚」とされ、この街道を歩荷（ぼっか）や牛に背負われて運ばれ、海のない信州では縁起物として年越しに食されました。

旧飛騨街道と木曽地域

越中（富山）から、飛騨（岐阜）を経由して、信州（長野）に至る街道は、300kmにも及び、高山から松本、木曽谷、飯田などに運ばれていました。
木曽地域には、その旧街道が今も残っており、ハイキングコースとして整備され、往時の暮らしに思いを馳せる人や、森林浴を楽しむ人から愛されています。

飛騨街道とブリの価値

富山の港では米1斗だったブリ1本の価値は、険しい飛騨街道を経て信州に運ばれると米1俵分にまで上がり、特に冬に日本海で獲れる寒ブリは味覚の最高峰とされ今日に至ります。信州では「ブリがないと正月が迎えられない」と言われるほど重要な存在で、その神聖さから供物として神に捧げられ、尾やヒレを軒先や贈り物の装飾に使用する文化も生まれました。

ブリ

ブリは、鯛とともに日本人にとっては縁起のいい魚とされ、成長とともに呼称が変わっていく出世魚として珍重されてきました。
富山など日本海側で獲れたブリは脂が乗って肉厚で味がよいとされ、特に11月から12月に水揚げされる「寒ブリ」は、産卵に備えて餌を十分に摂り、まるまると太っていて、しかも身がしまっているため、日本海の旬の味覚の最高峰と言われています。

神の魚

ブリは、その縁起のよさから神へ捧げる清浄な魚として選ばれてきました。西日本などブリの文化圏では、かつてブリの尾を縛って軒先に吊るしたり、調理した際の尾やヒレをのし代わりに贈り物に添えたりしていました。それはブリには忌（いみ）がかかっておらず、神に捧げる清浄な魚とされてきたからです。

飛騨街道の石仏文化

飛騨街道には、馬頭観音や大日如来、道祖神といった多くの石仏群が存在します。これらは吹雪から守護する存在として旅人の道中の安全を見守り続け、地域の信仰の対象となっています。

木曽馬

木曽地域で飼育されている馬で、短足胴長の特徴があります。山間部で飼育されていた為、足腰が強く、頑強と言われています。ルーツはモンゴルの草原馬で、日本の在来馬の原種とされており、その小柄で穏和な木曽馬をモチーフにした木曽駒は、信州の郷土玩具として愛されています。

オススメのトレイルガイド

1.日和田コース

• スタート:一位森八幡神社
• ゴール:山下家住宅
• 距離:11km
• 行動時間:7時間
• 上り:450m, 下り:480m (累積)

学業や商売の縁起物である一位の木に囲まれた一位森八幡神社から、3つの峠（前坂・長峰・関谷）を経て山下家に至るルートです。街道沿いや各峠には石仏群があり、長峰峠からは木曽御嶽山を望むことができ、日本の精神文化と自然を感じられる道となっています。

2.旧飛騨街道西野峠コース

• スタート:山下家住宅
• ゴール:開田支所
• 距離:4.8km
• 行動時間:3時間
• 上り:210m, 下り:270m (累積)

山下家から西野峠を経て城山展望台へ至るコース。標高1422mの展望台からは御嶽山、乗鞍岳、木曽駒ヶ岳を望め、西野地区の里山風景も楽しめます。峠を下った把ノ沢の集落では、のどかな農村の風景が広がります。

3.旧飛騨街道地蔵峠コース

• スタート:唐沢の滝
• ゴール:開田高原観光案内所
• 距離:8.5km
• 行動時間:6時間
• 上り:300m, 下り:240m (累積)

落差50mの唐沢の滝から始まり、木曽御嶽山を望む地蔵峠展望台を経て、末川村の石仏群を通り、開田高原観光案内所に至るルートです。道中には日本の在来馬として知られ地域の顔ともなっている木曽馬を飼育する木曽馬の里があります。

4.城山史跡の森ハイキングルート

• スタート:木曽福島駅
• ゴール:木曽福島駅
• 距離:9.5km
• 行動時間:6時間
• 上り:340m, 下り:370m (累積)

木曽福島駅から旧中山道と福島宿を通り、福島城跡のある城山史跡の森を経て権現滝に至る周回コース。歴史的英雄・木曽義仲も訪れたとされる権現滝は、不動明王像が鎮座する神聖なスポットです。